- 2021.02.15
- Science
Science Breakthrough of the Year 2020日本語版公開!
社長ブログ更新しました。
2020年の最も画期的な世界の科学の進歩は、切実に必要とされたCOVID-19ワクチンが記録的なスピードで開発・検証されたことである。
「これはいったいいつ終わるの?」、と母親に毎回聞かれる記者の苦しみから始まっている。孤独と不安と倦怠にさいなまれる高齢の母と会話をしていると、刑務所でガラスを隔てて電話を通して面会しているような気分になることがあった、とも。人々の人生が止まったままの1年の間にワクチンの開発がスタートし、12月は接種が可能にさえなった。
中国武漢で12月31日にクラスターが報告され、新年あけて新型コロナウイルスは発表された。世界に広まるや否や、すぐに中国の製薬メーカ数社でワクチン検索が始まり、開発の動きは米国、欧州に広がっていった。その後の世界各地での動きがまとめられている。
2020年には、COVID-19について莫大な数の研究が行われた。12月半ばまでに20万本を超える論文が査読誌に発表されている。この間、世界はパンデミックを封じ込めようと、様々な失敗を繰り返しつつ、闘い続けている、とも。
ワクチンの接種が始まっても、すぐに日常が元に戻るわけではないが、大きな希望である。いつかこの研究のエピソードが本になり、映画になるのでは、と私は思っている。どんな風に世界中の研究者がつながったのか、競ったのか、科学者の知恵と勇気を聞いてみたい。
その他にも興味深い9つの研究が報告されている。
CRISPER の研究がノーベル賞を受賞し、2つの遺伝性血液疾患の治療において臨床での最初の成功を収めたこと、地球温暖化について、40年前は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が産業革命以前の2倍になれば、地球の気温は最終的に1.5~4.5℃上昇する、だったが、データの精度が向上したことで、2.6~3.9℃の範囲に狭めることに成功した、と。喜ぶべき?いや、やばいと思うべきだろう。
個人的に興味深かったのは、鳥が(予想以上に)賢い、という研究だ。鳥の目がビーズのよう、脳はクルミほど小さいのに、驚くべき知的能力を持つらしい。鳥類の脳の一部が、ヒトの知能の源である大脳新皮質に似ている?また、ある程度の意識的な思考の能力を持つかもしれない?など、興味深い研究がわかりやすく紹介されている。
英語原版で既にご存じの方も、この機会に是非、日本語で読んでみてください。翻訳者の皆さん、日本語に直すのが大変だったと思います。ありがとうございました。
https://www.sciencemag.org/japanese-translation-breakthrough-year