- 2021.04.30
- コラム
機械翻訳とは何か。どこから来て、どこへいくのか?JTF40周年記念セミナーを終えて
4/27、2021年度第1回JTF関西セミナー「機械翻訳とは何か。どこから来て、どこへいくのか?」が開催された。第一線の翻訳者である高橋聡氏、東京大学の中澤敏明先生にお話をお伺いし、パネルディスカッションでモデレーターを務めさせていただいた。220名ものお申込みをいただき、翻訳者、翻訳会社様の皆様の興味の高さを実感した。
昨年出版された『機械翻訳:歴史・技術・産業』(森北出版社)に基づいて(セミナータイトルは、同書の帯から引用)翻訳された高橋氏と解説をお書きになった中澤先生お二人からお話を伺うのが本セミナーのポイントだった。高橋氏からは、訳書を通じて個人翻訳者が考えた機械翻訳についてのお話。そもそも翻訳とは何か、翻訳者は今後どう向き合っていくのか、一部の仕事は機械に奪われていくという現実と、翻訳者の仕事の必要性と可能性などに触れていただいた。
中澤先生からは、最新のニューラル機械翻訳の技術を、学習のデモを交えてわかりやすく説明いただいた。なぜ機械翻訳は間違えるのか、これから精度は上がっていくのか、など、数式を使わない最前線の研究のお話がとても興味深かった。
お二人を交えてのパネルディスカッションでは、まず、現実の運用として、機械は間違えるのだから、文句を言わない、わかって使うべき、情報としてのリテラシー教育が必要である、と。
また、翻訳の仕事は減っていくのか? という問い対しては、減る一方で、機械翻訳を効果的に使うためには対訳や用語集の整備などが必要で、そうした新しい仕事、リンギストのニーズも高まっている、と。
最後に、翻訳の品質を考える意味で、機械翻訳を使うか使わないか、ではなく、クライアントと合意した品質を翻訳会社、翻訳者が提供すべきで、その合意があれば、クライアント、翻訳会社、翻訳者、皆が幸せに仕事をすることが出来るはずである、と最後を締めくくった。機械翻訳はただのツールである。クライアントだけでなく、私たち、翻訳会社、翻訳者が効果的に使うための道を探っていきたい。
今回のセミナーで機械翻訳と翻訳のことが結論付いたわけではない。中澤先生が、翻訳者と機械翻訳(の研究者)がお互いをもっと理解するための「翻訳と機械翻訳の座談会」というYouTubeチャンネルを開設。
https://www.youtube.com/channel/UC4fiKKrfcvQY1dcZkjxfnHQ
是非登録し、参加してほしい。今日のセミナーの続きはこのチャンネルで。
今回のセミナー詳細:https://www.jtf.jp/learn/seminar/124
次回セミナー「冠詞を正しく使うためのマインドセット」案内:https://www.jtf.jp/learn/seminar/123
日本翻訳連盟 常務理事・関西委員長 株式会社アスカコーポレーション 社長 石岡映子 記