コラム

  • 2020.02.27
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岡耕平先生のこどもの見立て学 その2

「時間と空間」

この子はなぜこんなことをしてしまうのでしょう?さんざん言って聞かせたけど、改善が見られません。この子はきっとこういう子なんでしょう。諦めるしかないんでしょうね。みんな違ってみんないい(と自分に言い聞かせる)。

ちょっと待ってください。勝手に見限らないでください。こういう勝手に見限られている子どもに出会うケースは少なくありません。見限る側は「我慢」しているのかもしれませんが、見限られる側はその「我慢」によって何かの機会を失っているのかもしれません。両方にとって不利益が出ているのかもしれないのです。

こんな場面に出くわしたとき、私は「時間と空間」について考えます。時間と空間というのは、when と where ということです。もっとわかりやすくいうと、

  • いつからそうなんですか?いつもそうなんですか?
  • どこでも同じようにしますか?家では?学校では?

と考え、「我慢」している人に質問をします。

多くの場合の答えは「いや...ちょっと...それは...わからないですね」というものです。でも、ここをしっかり押さえておくことが大切です。

最初に「時間」「when」ということについて書いてみます。
まず「生まれてきてこの方ずっとそうである」という場合と「小学2年までは特にそんなことなかったんですけど、3年生くらいからちょくちょくと...」という場合では背景が全く異なりますし、必要な対応もおそらく変わるでしょう。

前者であれば、先天的なものに起因する可能性が高く、後者であれば後天的に環境から学習した可能性が高い、と考えられます(断定ではなく、あくまで可能性が高いと考えておくことが大事です)。

なんでいちいち分けて考えないといけないかというと、必要な対応が変わってくるからです。

先天的なものに起因する可能性が高い場合は、そもそものその子との接し方、情報の伝え方に問題があるのだと思います。その子がこの歳になるまで、いろんな人が関わってきて今のその状態がずっと続いているわけですから、これまで多くの人がとってきた一般的な接し方や情報の伝え方には効果がなかった(あるいは効果が得られにくかった)、と考えるべきでしょう。

後天的なものに起因する場合は、今のその子を取り巻く環境や条件に問題があるのだと思います。うまくいっていた(る)ときの条件について、過去に遡って整理してみるといいと思います。もちろん、環境や条件だけで決まるものではありません。その子の状態と、その子を取り巻く環境や条件の双方の関係から考えることが重要です。

たとえば算数の学習について、小学校の2年までは大きな問題が見られなかった子が、3年生あたりから授業に参加しようとせずにふざけることが多くなってきた、といったケースがあったとします。もしかしたら、その子は(小2の範囲の)掛け算まではどうにかついていけたものの、(小3の範囲の)割り算でついていけなくなったのかもしれません。なぜそうなったのか、ということについては改めて別に検討する必要がありますが、重要なのは「いつからそうなったのか」の境目を見つけて、その前後の違いについて整理することです。

今度は「空間」「where」について書きます。

どこでもそうなのか?と考えることは重要です。たいていの場合「家ではそんなことないんですけど...」「学校では落ち着いてますよ?」といったように、場所によって子どもの行動が異なります。そのとき、うまくいっている方の環境や条件と、うまくいっていない方のそれを比べてみてください。

このとき「いや、場所というか、家ではお父さんがいるから」「学校だと〇〇先生の言うことならちゃんと聞くんですが」などと人に起因させないことがポイントです。人ではなく「その人の言動が子どもにどのような条件や環境をもたらしているのか」と考えることが大切です。なぜなら、特定の人が原因だとなると、そのほかの人では再現できないということになってしまうからです。

このように子どもの行動についてみるときには、時間と空間(whenとwhere、「いつから?」と「どこでも?」)を確認することが大切です。こういうことを調べないまま子どもを「見限る」ということをしてしまうと、大人も子どもも損をしてしまいます。

滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 准教授
岡 耕平

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